コラム

校庭や公園には何がおすすめ?土・砂・人工芝・そして天然芝を徹底比較

校庭や公園の“床”は、子どもから高齢者まで ― すべての利用者の安全・快適さはもちろん、環境負荷や維持コストにも大きく影響します。イクシバ!プロジェクトが取り組む天然芝管理の現場経験を踏まえ、土・砂、人工芝、天然芝それぞれのメリットとデメリットを総合的に解説します。導入を検討する行政・学校・NPOのご担当者の参考に、最新の知見と実践データをまとめました。

1. 3 つの路面素材を一覧でチェック

校庭芝生

比較項目 天然芝 人工芝 土・砂
安全性・衝撃吸収 ◎ 自然なクッション性で転倒時の衝撃を緩和 ○ 充填材があれば衝撃吸収するが経年で硬化 △ 硬さ・石混入でけがリスクが高い
熱環境 ◎ 表面温度が低くヒートアイランド抑制 × 夏は 70 °C 超も。散水が必要 △ 水分が蒸発しにくく高温になりがち
環境負荷 ◎ CO₂吸収・生物多様性・雨水浸透 × マイクロプラスチック・焼却廃棄 ○ 施工素材がシンプルで低負荷
維持管理コスト △ 年間芝刈り 20~25 回、施肥・散水 ○ 10~15 年は草刈り不要だが充填材補充要 ◎ ローラー・グレーダーで平坦化程度
初期導入費(概算)/m² 中:7,000~15,000 円 高:12,000~25,000 円 低:2,000~4,000 円
耐用年数 半永久(適切管理前提) 10~15 年で全面交換 ― 年数劣化よりも土壌流失が課題
景観・ブランド価値 ◎ 四季で表情を変え、地域アイコンに ○ 年中緑色だが人工感 △ 土埃や泥濘は負のイメージ

※金額・回数は首都圏公共施設平均値(2024 〜 2025 年、イクシバ!調べ)

2. 天然芝のメリット

2-1. 安全面

  • 転倒時のケガ軽減:衝撃吸収指数(Gmax)は200 G以下を維持しやすく、脳震盪リスクを下げる
  • 滑り抵抗:適度な摩擦でスライディング時の摩擦火傷を防止

2-2. 環境・健康

  • 温度制御:日中の表面温度が人工芝より 20〜30 °C 低い
  • 空気浄化:1 m²で年間約 0.4 kg の CO₂ を固定し、花粉・粉じんを吸着
  • 雨水浸透:40 mm/h を超える降雨でも浸透し、排水設備への負荷を低減

2-3. 地域価値の向上

  • 生態系サービス:昆虫や小鳥が戻り、環境教育にも活用
  • 景観:四季の色変化が公園・学校のシンボルとなり、利用者満足度が向上

3. 天然芝のデメリットと対処法

芝生公園

課題 具体的影響 主な対策
維持費 芝刈り・散水・施肥・除草 ➀ 自動灌水+気象連動システム➁ エリア別管理で作業集中
摩耗 ゴール前やベースラインが剥げる ➀ ハイブリッド芝(天然+人工繊維)➁ 休養ローテーション
アレルギー スギ花粉同様イネ科花粉 ➀ 花粉飛散前の刈込➁ 品種改良で低飛散系統採用
冬季休眠 見た目が茶色くなる ➀ ウインターオーバーシード(ライグラス)➁ PR施策で“季節感”を演出

4. 人工芝の特徴を再確認

人工芝

  1. メンテは楽だが“ゼロ”ではない
    • ゴムチップの補充・ブラッシングが年 2~4 回必要
  2. 熱とマイクロプラスチック問題
    • 夏期表面 60 °C超で利用制限、雨で樹脂充填材が流出
  3. 耐用年数後の全交換コスト
    • 撤去費用は設置費の 30~40%。廃棄は産業廃棄物扱い

5. 土・砂グラウンドの現実

校庭土砂

  • 導入費最安:造成・転圧のみ
  • メンテは意外に高頻度:降雨後の水たまり処理、散⽔による粉塵対策
  • 安全性の課題:踏み固められると転倒時衝撃 300 G超、骨折や擦過傷リスク
  • 環境面:雨で土壌流出し周辺排水溝を詰まらせることも

6. ケース別選択ガイド

利用目的 推奨路面 理由
幼児・小学生の常用校庭 天然芝 けが予防・熱中症リスク低減・環境教育
部活・大会で 365 日フル稼働 ハイブリッド芝*¹ または 人工芝 耐摩耗性重視。夏季は散水設備を備える
災害時の一時避難・ヘリポート兼用 土・砂 耐荷重とスペース転用性が高い
地域の防災公園(広域避難) 天然芝 + コンクリ舗装帯 平常時は快適、非常時は大人数滞在とテント設営

*¹ 天然芝の根に樹脂繊維を縫い込み摩耗を抑える工法

7. 天然芝導入・運営のステップ

芝生公園

1.設計段階

    • 透水性基盤&暗渠排水を確保
    • 日照・風通し・利用量をシミュレーション

2.施工時

    • 日本芝(コウライ・ティフトン) or 寒地型(ケンタッキーブルー)を利用目的で選択

3.維持管理計画

    • 年間作業カレンダー(芝刈 5~10 mm/回、施肥 4~6 回)
    • 週単位の使用制限ルールを校内・地域へ周知

4.市民・児童参加型マネジメント

    • イクシバ!方式:ボランティア講習 → 定期作業イベント → SNS共有で愛着形成

5.評価 & 改善

    • ドローン空撮 + NDVI 解析で生育状況を可視化
    • 年度ごとの利用者満足度アンケートでKPI設定

8. まとめ ― “育てるグラウンド”の価値

  • 気持ちよさ安全性を両立しつつ、
  • 環境負荷を抑え、地域コミュニティが参加して育てられる

天然芝は導入・維持に手間がかかる素材ですが、そのプロセス自体が地域の学びと絆を生み出す投資でもあります。イクシバ!プロジェクトでは、自治体・学校・市民が協力し、**「走って楽しい、眺めて癒やされる、未来へつながる緑」**を届ける仕組みづくりをサポートしています。導入を検討する際は、初期費用だけでなく “総合的な社会価値” を評価軸に、グラウンド選びを進めてみてはいかがでしょうか。

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